プタヴの世界
WORLD OF PTAVVS
ラリイ・ニーヴン
1966
「リングワールド」を代表作とする「ノウンスペース」シリーズであり、ニーヴンの処女長編である。22世紀初頭の地球。人口は180億人となり、小惑星帯には80万人の人口があり、地球社会とは独立し対立の関係にある。人類は太陽系外にも進出し、シリウスAの第三惑星ジンクスには、植民都市シリウス・メイタができていた。
イルカには知能があることがわかり、テレパシー能力をもつ者との間でコミュニケーションがはかられつつあった。
宇宙の支配者であったスリント人のクザノールは、宇宙船の故障により、宇宙服内部の時間を停止できる停滞フィールドの宇宙服を着て食糧惑星までの300年の旅を行い、救助を待つことにした。
しかし、救助は行われず、15億年の時がたった。
彼が埋まっていた星は地球。人類は、時間遅延のフィールドを発明し、クザノールとの出会いを果たす。
惑星ジンクスには、巨大なプロントザウルスに似た単細胞生物バンダースナッチがいた。
彼らは知性を持っていたが、クザノールの時代、それは食糧惑星のホワイトフードとして知性がないもののはずであった。
なぜ、彼らは知性を持っているのか?
スリント人はどこに行ったのか?
そして、地球人とは?
地球人はクザノールに支配されるのか?
地球と小惑星帯の緊張は戦争になるのか?
まだ、ノウンスペース・シリーズが構想されないまま、ニーヴンの処女長編は、なぞがなぞを呼ぶ形で進む。
基本はエイリアンが地球にやってきて、地球人を支配しようとし、それに対抗するというエイリアンSFの王道である。しかし、そこに描かれる宇宙に人々はひかれ、作者もひかれ、複雑な宇宙が登場する。
「リングワールド」にむけて、今、世界が広がる。
それにしても180億人かあ。大変だ。
(2004.6.15)
2022年12月再読
遠い過去に地球に訪れていた異星人クザノールを目ざめさせてしまった。人々を支配する力を持つクザノールと、クザノールの精神に触れたことで自分がクザノールだと信じ込んでしまったテレパスのラリイ・グリーンバーグは、遠い昔にクザノールが隠した秘密兵器を求めて地球から宇宙船を持ち出して海王星をめざしはじめた。その2隻を追うのは、国連科学警察の無任所要員170歳のルーカス・ガーナー。
地球から届けのない宇宙船が飛び出したことで、小惑星帯の政治リーダーは危機を覚える。ルーカス・ガーナーは、人類を滅ぼしかねない力を持つクザノールを抑え、ベルターと地球の戦争を回避できるのか?
そういう物語でもあった。
古代遺跡として海の底で発見された不思議なゴブリン像。それは実は内部の時間を停止する停滞フィールドに入った宇宙人であった。生きているのか、死んでいるのかは分からないが、もし停滞フィールドが稼働したままであれば、中の宇宙人と接触できるかも知れない。
この古代の遺跡から人類を超える力を持った何者かが登場・再生し、人類に混乱をもたらす、というのは物語のパターンである。SFであれば、高度な知性を持った異星人、未来人、過去の文明人、破壊的なロボットや異星生物、疫病等々。SFでなければ、神、天使、悪魔等々。
そこからどのように物語を展開するのか?
本筋の物語だけでなく、小惑星帯人が子供を無事に産むために開発した「出産小惑星」と、それに伴う社会のありよう、地球での限られた長寿人の生活など、異星人との大きな物語を背景にして描かれる太陽系時代の人々の物語がノウンスペースシリーズの魅力なのであろう。