ゼンデギ
ZENDEGI
グレッグ・イーガン
2010
(twitter)読了。イーガンの著作の中ではもっとも分かりやすいSF。近未来イランを舞台に広げられる子を持つ親の物語。
今、新幹線の中で、スマホ(スマートフォン)の音楽を聴きながら、ノートパソコンで書いています。音楽は、CDから取り込んだもので、圧縮したときには、WMAでしたが、その後、MP3化したものです。圧縮→方式転換で2回劣化していますね。CDにする際にも、原音からデジタル化する過程で音を減らしています。そうなるとマスターテープから3回劣化。さらに、再生する装置、ソフトによってデータの扱い方が変わり、音は変質します。
パソコンの画面では、平行してSNSからの写真が流れています。こちらもまた、デジタルカメラで撮影され、補正され、圧縮され、展開されて、再生する装置、ソフトによってデータの扱い方が変わり、絵は同じではなくなります。
デジタル化、ハードウエアとソフトウエアの混合によるデータの処理は格段に高速、大容量化し、便利になりました。この原稿だって、キーボードで流れるように書くことができ、悩んだときには、FEPが、変わりの語や、文の乱れや、変換する漢字を教えてくれます。しかし、それは時には、思考を誘導してしまいます。
ロジカルな誘導は気になりません。メタ思考をしない限り。
ロジカルでない場合、ノイズとして気がつきます。
たいていの場合、ノイズはすぐに忘れてしまいます。継続したノイズでない限り。
デジタル化。デジタルアーカイブ化。
まだ、化学物質の反応系である匂いや味は再現されていませんが、やがてこれらもハードウエアとソフトウエアの混合物によってデータ化されるのでしょうか。
そうなると、思考や環境もデジタル化されていくのでしょうか。
見る、聞く(光と音)については、ずいぶんデジタル化され、光と音とで構成される環境は主にゲームの世界を中心に技術が進歩しています。
この先に何があるのでしょうか?
人間をシミュレートすることが可能になるのでしょうか?
イーガンは、常に、思考と環境の関係を考え、SFの小説形態を使って問い続けます。
その問いは、時には分かりにくく、5年、10年後になってようやく理解可能になるものもあります。
それに比べると、本書「ゼンデギ」は直近の未来を描いた作品であり、現代(近過去)を踏まえて書いてある故に、分かりやすくなっています。
不死。
それは人類のひとつの夢であり、物語でもあります。
デジタル化、アーカイブ化された、そのデータは、果たしてその人でしょうか。
ねえ、このテーマってずっと、ずっと、ファンタジーの頃から続いてきましたよね。
どう思いますか?
(2015.08.21)