last and first men
2020
2018年に急逝した音楽家ヨハン・ヨハンソンが監督した映画作品である。
そして、オラフ・ステーブルドンの小説「最後にして最初の人類」が原作である。いつか読まなければいけないと思っている1930年!に書かれた20億年未来の人類から現代の人類に送るメッセージの物語である。
オラフ・ステーブルドンといえば、「オッド・ジョン」「シリウス」ぐらいしか読んでいない。ほぼ戦前の作家である。しかし、「最後にして最初の人類」が後のSFや様々な芸術、科学に与えた影響は大きいと聞く。偉大なる小説家なのだ。
この映画はヨハン・ヨハンソンが急逝したことで完成は遅れたが、遺作として仕上げられた。
見終わって最初に感じたのは映画監督アンドレイ・タルコフスキーのことである。「サクリファイス」「ノスタルジア」といった静かな時間の中に流れる人の物語、それに「惑星ソラリス」や「ストーカー」といったSF作品に描かれる人の物語。それと同じものを感じる。と同時に、同様にたぶん夢うつつになってしまう映画だ。
本作品に人間は映像としては登場しない。はでなCGもない。モノトーンでいくつかの建造物とその風景がヨハンソンの音楽に乗って流れていくだけである。そして、ときおり女性の声で20億年の人類の物語が語られていく。
音楽と、映像と、ティルダ・スウィントンの声。
たったそれだけなのに、宇宙の広大さ、時間と空間のなかに刹那に存在する生命のはかなさ、せつなさ、かなしみ、希望、喜び、可能性、そういったものが心の奥底に響いてくる。
我々が存在する宇宙が誕生して137億年、太陽系が誕生して46億年、地球に生命が誕生して35億年、「我々」現生人類が登場して20万年。太陽の寿命はあとおよそ50億年ほど。しかし地球の寿命は太陽のふるまいによって変わる。それでもあと5~10億年程度と見積もられている。
20億年後、仮に人類の末裔が存在するとしても、すでに地球を離れ、ひょっとすると太陽系を離れているかも知れない。姿も、思考も、なにもかもが変化しているだろう。20億年あればひとつの方向だけではないかもしれない。
それでも、タイトルにあるように「最後の」人類からのメッセージが届く。
それはどのようなものなのだろうか。