A ROBOT IN THE GARDEN
デボラ・インストール
2015
—「庭にロボットがいる」妻が言った。—
この一文からはじまるのが本書「ロボット・イン・ザ・ガーデン」である。直訳である。
その通り、ある日若い夫婦の家の庭にロボットが座っていた。
よくいる家庭用のアンドロイドではない「ロボット」だ。アンドロイドとロボットの定義を議論し始めたらきりはないが、この世界では家庭用ならば掃除、食事、子供の送迎までできたりする人型ロボットを「アンドロイド」と呼び、とても人型と言えないロボットを「ロボット」と呼ぶ。そして、庭にいるのはおんぼろのロボットだった。
ロボットを最初に見つけた「妻」はエイミー・チェンバーズ、法廷弁護士である。そして、この家の所有者であり現在無職の夫が主人公のベン・チェンバーズである。両親を事故でなくし、姉で妻と同じく弁護士のブライオニーと遺産を分け合い、家もあり、財産もそこそこあるので働かなくても暮らすことはできるし、仕事も慌てることはないとちょっと引きこもり状態の男である。
エイミーが言外に言ったのは「庭の(薄汚い)ロボットをなんとかしろ」である。エイミーはちょっと見栄っ張りなのだ。しかたなくベンはロボットに話しかける。
それが物語の始まり。
知能は備わっているらしい。そして所有者の痕跡もある。さらに胸部には黄色い液体の入った瓶がついていて、ひびが入っている。どうやってここに来たのか、そして、修理はできるのか、片言の会話を続けるうちにベンはロボットが気になるようになる。もしかするとこの液体がなくなるとロボットは死んでしまうのかも知れない。心配になる。
一方のエイミーはそれも含めてベンにほとほと愛想が尽き、家を出てしまう。
ベンはロボット、自称アグリッド・タングを連れて、製造元や元の所有者を探して旅に出ることにした。
という物語。大人のジュブナイルである。
SFであるがファンタジーでもある。
ヤングアダルトの成長譚といってもいい。
なんなら迷子で記憶喪失の少年を連れたロードムービー的なストーリーと言ってもいい。
読みながら、ずっと子供の頃に読んでいた絵本「ぽんこつロボット」(古田足日絵・田畑精一文)を思い出していた。こちらはガラクタロボットを少年がつくる話だが、やはり旅をするのだ。
青少年と壊れかけのロボットには旅をさせるとよいのだ。
そういえばまだ見ていないけれど、映画「ロン 僕のぽんこつ・ボット Ron’s Gone Wrong」(2011)というのもあるな。こちらはどうなのだろう。
そして、旅というのは生きて帰りし物語というのが筋が良いとされている。
ぽんこつロボット・タングの運命は。そして、ベンは大人として成長することができるのか? 刮目して見よ。
続編も翻訳されているらしい。