SWARM STAR FORCE SERIES #1
B・V・ラーソン
2012
いまでも続いているのかは知らないが、聞くところによるとアメリカの長距離トラックドライバーの中には、オーディオブックでSFなどエンターテイメント小説の朗読を聞くのを楽しみにしている人たちが多くいて、一定の需要を満たすために、そのための小説などが書かれたりするという。日本ではそうでもないが、オーディオブックは海外ではそれなりの市場となっていて、近年、日本でもamazonなどが積極的に日本市場への導入を図っている。
滅多にないことだが私も長距離ドライブの際に、落語を聞いて過ごすこともあり、また、子どもの頃寝る前にラジオドラマを聞いていたこともあって、オーディオブックに興味はある。興味はあるが、聞くタイミングが難しい。毎日数時間の手作業の時にはFMラジオを聞いているが、時折、作業音のために聞こえなかったりする。それでも構わないのは聞き流しているからだ。手を動かすことに優先順位はあり、聞く内容がどんなに重要でも、よほどのことがない限り手は止められない。
運転中のオーディオブックは、もちろん、巻き戻したりすることはできるが、やはり基本は運転に意識を傾けつつ、小説の内容も頭に描きつつ、ということで、最優先すべきは運転であり、ただ運転は荒野のハイウエイなど状況によってある程度意識せずとも自動的に対応できるので小説の内容に意識を向けることが可能になる。
ただ、複雑な文章や設定、構成、単語などが出てくると、「考える」必要がでてくるので、なるべく単純な文章、平易な語彙、分かりやすい設定や構成が求められる。
たとえば、本書「スターフォース」の設定。宇宙から突然無数の宇宙船がやってきて、人を一人ずつさらっては何らかのテストをして、テストに合格して生き残った者にその宇宙船の管理権限を渡す。そして、その宇宙船と管理者となった人間は後から来た別の宇宙船と闘う運命が義務づけられる。勝たなければ人類は滅亡する…。
主人公は従軍経験はあるが、大学でコンピュータ学を教える教授であり、田舎で趣味の農業もやっている妻を亡くし子供がふたりいる中年の男性。多くの試練を経て、やがて超人的な力を得ることになる。そばには若い美しい女性の姿。
ペリー・ローダンかはたまた火星の王、ジョン・カーターか?
内容は単純明快。文章も展開もステップバイステップで分かりにくいところはない。登場する軍人の性格はステレオタイプでOK。宇宙戦闘、地上戦闘、ドンパチもきちんと繰り返し登場するし、主人公は悲しんだり怒ったりと忙しいが、偶然そばにいることになった女性への欲求も欠かさない。21世紀の小説とは思えないほど、マチズモ。
中年男性のためのライトノベルといったところかな。
本作の作者は2000年代に登場した電子書籍専門で書き始めた新しいタイプの作家らしい。
かつて1970年代を中心にアメリカで盛んだった抱き合わせペーパーバック小説ぐらいの勢いで次々と多彩な分野で作品を出し続けているという。たしかに、その才能はすごい。
なお、続編は翻訳されていないが、「ヒーロー爆誕」ということで、あとは読みやすいだろう英語の原書か、オーディオブックでどうぞ。