映画 地球の静止する日

1952
The Day the Earth Stood Still

 古典SF映画の名作である。リメイクされた作品は見ていないのだが、これはオリジナル。70年以上前の作品である。監督ロバート・ワイズ。
 空飛ぶ円盤飛来! 巨大人型ロボット! 人型の宇宙人のファーストコンタクト!
 全部揃っているが、ストーリーは冷戦時、核戦争の恐怖におびえる世界を描いている。

 話はこうだ。世界中で空飛ぶ円盤の飛行が目撃された。その円盤はアメリカの首都に着陸した。あわてて警戒し、戦車をはじめ軍が円盤を取り囲む。その周りにはたくさんの野次馬となった人々の姿がある。円盤からは、銀色の服を着た人間そっくりの男が降り立った。円盤を降り、近づいてきて英語を話し始める宇宙人クラトゥ。しかし、動揺したひとりの兵士が彼を撃ってしまう。そして、円盤からは巨大なロボットが登場し、武器や兵器を破壊しはじめる。クラトゥはロボットを制止し、地球の病院に運ばれていく。
 病院で驚くべき回復力を見せるクラトゥ。彼は「この国の責任者との面会」を要求する。そして、全世界の国家指導者を一堂に集め、そこで来訪の目的を語るという。その願いが叶えられなければ地球はたいへんな危機に陥るというのだ。
 しかし、冷戦下の不信に満ちた世界で、たとえ国連があっても国家指導者が一堂に集まることはなかった。
 クラトゥは地球人の考え方を知るため、病院から逃げだし、宿に泊まることにした…。

 第二次世界大戦は、アメリカが日本に原爆をふたつ落としたことで終結した。アメリカは核を持つことで世界の覇権をにぎることになった。しかし、東西に分かれた世界で、その覇権は長く続かない。ソビエトもまたその国力の元で核兵器を開発し、ふたつの超大国が互いに核ミサイルを向け合って、どちらが最終兵器を先に使うのかと不信と不安に満ちた時代を迎えていた。
 冷戦とは、最終戦争、核戦争の危機を日々過ごすことだったのだ。
 そんな時代の映画である。

 絶望の中に人は外からの圧力を求める。「オーバーロード」ものである。SFには圧倒的に進んだ地球外文明が人類の指導者として登場するジャンルがある。この映画もまた、そんなオーバーロードの作品である。
「もはや自分達だけではこの危機を乗り越えられないのでは?」という不安がそれ望むのだろうか。
 70年前の作品を見ながら、70年後にふたたび訪れた核戦争の危機を感じつつ、オーバーロードなしに乗り越えるしかないと思うのであった。