宇宙のランデヴー
RENDEVOUS WITH RAMA
アーサー・C・クラーク
1973
70年代クラークの代表作である。先日読んだグレッグ・ベア「永劫」と似たような設定だが、もちろん、こちらがオリジナル。2130年頃、小惑星の地球への衝突を防止するスペースガードが発見した直径40kmという巨大な小惑星はラーマは、自転時間4分。宇宙探査船が調べたところ、それは間違いなく人工物だった。太陽系に入り、早いスピードで太陽に接近し、そして去っていく軌道をとっている。接触できる時間は限られていた。ノートン中佐率いる宇宙船エンデヴァー号が唯一、接触可能な宇宙軍艦船であった。かくして、ノートン中佐らは、ラーマ上に着陸、内部の探査をはじめる。そこには、地球の科学力を超えた想像を絶する世界が広がっていた。最初は死んだ世界だと考えられていたが、そこには有機物質で作られたバイオロボットが定められた機能を発揮し、何らかの目的で動いていた。
小惑星を宇宙船として製造したとき、内側の世界ではどのような物理的事象が起こり、どのような光景が広がり、どのような気象が発生するのか。今や、日本のアニメではおなじみのスペースコロニーの風景を壮大に描いている。異星人、異星文明との出会いというよりも、その世界を描き、提示するための小説である。
ある意味で、SFらしいSFと言えよう。
それだけといえば、それだけなのだが。
本書が書かれたころ、1969年にアポロが月に着陸し、ソ連はソユーズを飛ばし、1972年には火星探査のマリナーが写真撮影を開始しているが、NASAは予算縮小に向かっていた。日本では、大阪万博があり、カシオミニが発売され、というような頃である。
その頃に、壮大な小惑星宇宙船とその内部を描いているのである。
クラークの天才ぶりがうかがわれるではないか。
ところで、本書はその後、80年代終わりからジェントン・リーとの共著で続編がシリーズ化されて書かれている。あいにくそちらは読んでいない。そのうち読んでみたい。
でも、当時は、謎のまま終わるSFでもよかったのだ。
ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞
(2004.7.16)