放浪惑星骸骨の洞窟

放浪惑星骸骨の洞窟
INTO HYDROSPHERE
TIME’S MAUSOLEUM
THE SUNLESS WORLD
ニール・R・ジョーンズ
1933
 金属の箱に入ったサイボーグ・ジェイムスン教授シリーズの第二弾は「水球惑星義勇軍出撃の巻」「教授なつかしの四千万年昔へ戻るの巻」「放浪惑星骸骨の洞窟の怪の巻」の3短編である。脳みそを金属缶の中に入れられ、取り替え可能な4本の足と6本の手、そして360度の視界を持つ目を持つジェイムスン教授が宇宙の時空を超えた大冒険である。
 それぞれに、「ジェイムスン」らしさがでる、古典的スペースオペラであるが、なかでも必見はタイムマシンで過去の地球の歴史をたどる「教授なつかしの四千万年昔へ戻るの巻」であろう。1930年代にはわくわくしたであろう太陽系創生の秘密、人類の誕生などが書かれていて楽しい。
 ちょっとネタバレになるが、太陽系の惑星ははふたつの太陽がすれ違って生まれ、そもそも地球は第四惑星であったのだ。
 人類は紀元前20万年前には群居生活で、家族の形成をはじめていた。
 その頃、すでに火星では知的生命の文明が興り、地球にも宇宙船を飛ばしていたのだった。
 そして、地球にも文明が興り、アトランティス大陸は沈み、その後は歴史に書かれている通りである。
 地球は、20世紀終わりか21世紀になって、宇宙塵の厚い雲に覆われ太陽を見失う。人類は地下に都市を築き、そして100年後、危機が去り再び地上に都市を再建する。23世紀には宇宙に進出し、数百年後には火星、金星などへの植民を行った。人類は太陽系全体に版図を広げ、数百万年に渡って後退と進歩を続けた。しかし、その後、太陽系外からの異種生物侵入により人類は絶滅の危機にさらされる。ようやく侵入者を追い出したが、太陽系文明は崩壊した。そして、数十万年後には、人類の姿が大きく変わりはじめる。平均寿命は1万年近くとなり、衰退する太陽系を脱出し、シリウス星系に移住する計画をすすめていた。そして、太陽系から生命の姿が消えた。1950年代から500万年のできごとである。それからさらに3500万年の間、ジェイムスン教授の遺骸は地球の周りを回り続けたのだ。ゾル人達に発見されるまで。
 どうだろう。なかなか派手な人類の興亡ではないか。
 物理学的、生物学的、あるいは、歴史的不具合は気にするな。
 気持ちを1930年代に戻して、未来を夢見ようではないか!
(2005.11.30)