銀河帝国の興亡3

銀河帝国の興亡 3
THE SECOND FOUNDATION
アイザック・アシモフ
1953
 いよいよ銀河帝国の興亡三部作の締めくくりである。ファウンデーションシリーズは、本来ここで終わると思われていた。また、アジモフ自身もそう考えていた節がある。しかし、1983年、多くのファンと編集者の圧力に負け、ついに「ファウンデーションの彼方へ」で続編が書かれ、シリーズはアジモフのロボット物まで巻き込んで別の次元へと向かった。
 手元にあるのは創元版で1979年の22版340円。ちなみに、ハヤカワからは「ファウンデーションの彼方へ」が登場し版権を押さえたことから1984年に「第二ファウンデーション」として新訳が出ている。
 はじめて三部作を読んだのが中学校の終わりか高校のはじめで、大学に入ってから「彼方へ」が出たものの、なんとなくしばらくは読まずにいた。三部作の思い入れが深かったからである。それでも結局文庫版になったところで1996年には第四部を読み始めてしまった。そうして、大いなる世界の変転を知ることになるのだが、それはまた別の話であり、「銀河帝国の興亡3」には、三部作完結版としての壮大なドラマが用意されている。
 第三部は、原題やハヤカワ版タイトルにある通り、第二ファウンデーションの物語である。前半は、今や宇宙の支配者となったミュールによる探索であり、ミュールの死後、再び力を取り戻した惑星テルミナス(ハヤカワ版ではターミナス、以下統一)の第一ファウンデーションによる探索である。
 ミュールにとって、第二ファウンデーションは潜在的な脅威であり、第二ファウンデーションにとってミュールはセルダン計画が予期しなかった「非人類」による歴史への介入であり、なんとしても排除し、修正しなければならない存在だった。
 そこで、第二ファウンデーションはミュールに壮大な罠をしかける。しかし、それは、第二ファウンデーションの存在と気配を第一ファウンデーションに気づかせてしまい、セルダン計画を危機に陥れる危険性を秘めたものだった。
 第二ファウンデーションの計画は功を奏し、ミュールの危機は去り、ファウンデーションが力を取り戻して約半世紀が過ぎた。ファウンデーションはその物理的な科学力を背景に、心理学も発展していた。そして、心理的な分析を行う機械を発明し、数人のターミナスの研究者らがファウンデーションの主要な何人かの大脳が操作を受けていることに気がつく。それは、第二ファウンデーションによる第一ファウンデーションへの介入と思われた。第二ファウンデーションに気がつかれることなく、第一ファウンデーションが「独立」するためには、第二ファウンデーションの野望を打ち砕かなければならない。そうでなければ、セルダン計画で6世紀後に来たるべき「第二帝国」の実権を第二ファウンデーションに奪われるであろうからだ。
 この密やかな第二ファウンデーション探査計画はミュールが首都としていた惑星カルガンから行われた。しかし、それとほぼ同時に、ミュール没後のカルガンでミュールの後継者であるステティン太守がファウンデーションとターミナスに戦争をしかけた。
 第二ファウンデーションの秘密の鍵を握ったのは、14歳の好奇心旺盛な女の子アーケイディア・ダレル。ベイタの孫娘である。彼女は、彼女の好奇心と不思議な縁でカルガンを経てかつて祖母や父母が過ごし、自身が生まれた惑星トランター、かつての帝国の中心にたどり着き、そこで「真実」に気がつく。第二ファウンデーションの所在と、その野望を。
 ついに第一ファウンデーションは、第二ファウンデーションを今度こそ壊滅させ、唯一のファウンデーションとして自力で第二帝国の構築への道のりを歩き始めた。  しかし、もちろん、第二ファウンデーションは滅んではいなかった。それは最後に場所を明らかにされる。第二ファウンデーションは、ふたたび歴史の背景に消え、ファウンデーションとセルダンの計画はミュールの影響で受けた傷を修正し、ふたたびその未来に向かって進み始めるのであった。
 大団円である。
「星々の果て(スターズ・エンド)」にあるとされた第二ファウンデーションは一体どこにあるのか、が、第三部の主題であり、もうひとつ、セルダン計画は終わったのかという主題がその回りを踊っていた。
 そのわかりやすくも奥深いドラマは、初期三部作ならではのものである。
 なんといっても、本書を一貫して流れる「星々の果て(スター・エンド)」とはどこなのか、第二ファウンデーションは実在するのか、そして、どんな役割を持つのかの謎は、この前作第二部を含めて読者の心をつかんで離さない「謎」であった。この謎解きが、ひとりの探偵によって行われるのではなく、歴史的な事件の中で行われる。その謎解きの手法と、明らかにされた「真実」に驚喜してしまう。
 ファウンデーションシリーズがその後の新たな展開と視点を見せたとしても、ハリ・セルダンの心理歴史学とファウンデーションの初期400年の歴史は今もなおそれだけで読み応えのある宇宙史である。
ヒューゴー賞(1966年ベストオールタイムシリーズ部門)受賞作品
(2006.03.18)