銀河市民
CITIZEN OF THE GARAXY
ロバート・A・ハインライン
1957
遠い未来、人類は地球を中心にたくさんの星々に広がっていた。宇宙は、自由商人、海賊、そして、海賊を取り締まろうとする銀河連邦宇宙軍のものだった。
惑星サーゴンでは、奴隷市が開かれていた。密輸船で運ばれてきた「奴隷」たちを人身売買するのである。惑星サーゴンをはじめいくつもの惑星や星系では違法な奴隷制がはびこっていた。
惑星サーゴンの奴隷市で最低価格にもならずに「乞食のバスリム」によって買われた少年ソービーは、幾人の主人を経て手に負えない少年として売られたのであった。しかし、ソービーはバスリムに出会うことで、彼の未来を手に入れる。
秘密の仕事をしていたバスリムによって人間の尊厳を教えられ、高等教育をほどこされたソービーは、惑星サーゴンを離れ、自由商人の「一族」世界や、銀河連邦軍の規律の世界を知り、そして、ついに彼自身の出自を知るのであった。
これぞジュブナイルであるという本。まず、少年は最低の状態で最悪の状況に置かれる。しかし、彼が出会った大人によって彼は導かれ、新しい運命を自らの手で切り開く。その運命は、彼の選択によって次々に変わり、ついには、彼は自ら世界をつかみ、役割を知るのであった。
拾われた少年が実は王の失われた息子であるというのは、物語の典型であり、そのパターンに沿って書かれている。だからといって本書の魅力が減じるわけではなく、惑星サーゴンの風景、自由商人の一族のルールなど、今読んでもおもしろいこと請け合いである。
本書「銀河市民」は、野田昌宏氏の訳により、文庫では昭和47年10月(1972年)に発行され、手元にあるのが昭和55年の第9刷。カバーイラストは、斎藤和明氏の手によるもので、アメリカンコミック風宇宙戦争といった感じである。「ハヤカワ名作セレクション」で新装販売されているが、こちらは日本のコミック風のイラストで少年と少女の絵が描かれている。時代の差だなあ。
昭和55年といえば、私は高校生になりたての頃で訳者あとがきの「野田昌宏先生のローティーンのための特別巻末解説」とぴったり合う年齢であった。残念ながら、野田先生がすすめているようにSFを英語で読むようになるにはそれから20年が必要で、しかもSFではなくもっと低年齢でも読める「ハリー・ポッター」からはじまるのであった。
野田先生によれば、中学校3年生程度の実力で読める作品であるという。そうか、今度、原文を読んでみようかな。
(2006.6.27)