叛逆航路

叛逆航路
ANCILLARY JUSTICE
アン・レッキー
2013
 すげー未来。ものすげー未来。主人公は肉体を持って行動する孤立してしまった人工知性の軍人。元は超巨大な宇宙戦艦の人工知能。それは兵員母艦と呼ばれ、大量の凍結された肉体を内蔵している。宇宙戦艦の人工知能は、宇宙戦艦を動かし、メンテナンスし、艦長、副官の世話をし、彼らの要員として仕え、軍人として闘い、恐れられる。ひとりひとりの肉体にダウンロードされた知性の存在を属躰と言う。属躰は人工知性の枝であり、一体として動く部品であると同時に、独立して思考し、行動する。情報は同時に並列化され、命令も同時に行われる。宇宙戦艦の人工知能は、宇宙船にいながら、その内側、外側、それぞれの属躰でもある。数千人を動かすことも容易なことだ。
 そして、主人公の船は、19年前に失われてしまった。同時に、属躰も、ひとりを除いて、すべて失われてしまった。人工知能は、ブレクと名乗り、自らを葬った者への復讐の闘いをはじめる。その旅の途中で、1000年前に自らの船の副官であり、その後転属して、そして、ある理由から1000年後の今になって目覚めることになったセイヴァーデン・ヴェンダーイを救う羽目になる。
 物語は、わたしである人工知性のブレクによって一人称で語られる。そして、セイヴァーデンと出会った「今」と、まだ宇宙戦艦が存在していた19年前の物語が交互に語られていく。
 いろんな惑星が出てくる。
 わたしは、わたしたちであり、わたしでもある。
 時間も超えてしまう。
 さらに言えば、惑星によって「性」の扱い、言葉における「性」の表現の多様性が異なり、人工知性は「それが理解できない」ゆえに、言葉を間違えないか常に気にしているという設定が、物語の表現に複雑な深みを与える。
 英語の言葉における性の表現と日本語のそれは異なるため、訳すのも大変だったのではないか。
 そういうことも置いておいて、エンターテイメントとして面白い。こちらも3部作らしいので、全部読んでからもっと深いことは書きたいと思う。
 あっという間に読み終えました。
2015.12.19