スターストリーム
DOWN THE STREAM OF STARS
ジェフリー・A・カーヴァー
1990
「スターバースト」の続編であるが、まったく独立した長編小説でもある。読み終わるまで「スターバースト」のこと思い出さなかったのだから間違いない。導入の時に、「あれ、どこかでこの設定読んだことがある」、とは思ったが、導入がさくっと前作の概要になっているんだな。
主人公はクローディ。標準時間8歳の少女。舞台は、宇宙を横断する超空間を航行している植民船チャリティの中。登場するのは同級生、親、宇宙船チャリティにひっそりと存在し、大きな意味ですべてをコントロールしている人工知能と、宇宙船そのもののサブプログラムであるロボット教師、言葉をしゃべり共感する能力を持つ獣と、その獣が属するサーカスの人たち、船長と一部のクルー、少数の人類と交流のある異星種族の乗客。それから、超空間そのものであり、かつて人間だったものも包括する何者か。あと、超空間や通常空間で人類の宇宙船や植民星に死と虐殺をもたらす宇宙の種属であるスロッグという正体不明の「敵」。
すっかり忘れているけれど、前作でも影のテーマが「意識」だったように思う。本作も、テーマは「意識」にある。クローディは、自分の存在を自分自身から遊離させて他者に認識させる力を持っているらしい。ドッペルケンガーとか、生き霊みたいなものかな。ふだんから、「力」を無意識に発揮して他者とのコミュニケーションをはかっている。
さて、ストーリー。
安全なはずの超空間で、人類などを襲うのは正体不明のスロッグ。これまでにも何度も超空間の航路で突然襲われていた。逃れるために通常空間に降りて手近な植民星に近づくと、その植民星ごと人類や他の宇宙種属が襲われ、殺されてしまう。ほぼ滅ぼされてしまった宇宙種属もいる。スロッグの母星がどこにあるのかは分からず、どのように通常空間、超空間を出入りするのか、出没方法さえ分かっていない。悪魔のような存在だ。
植民船チャリティの近くに、このスロッグが近づいているらしい。そんななかで、クローディの能力に注目している船に積まれた人工知能は、クローディの能力を引き出し、迫り来るスロッグとの邂逅に備えようとしていた。何も知らないクローディは、自分の能力にとまどいながらも、自らと友、家族、船の人たちのためにその能力を使おうと決意する。
異質なるもの同士の意思の疎通は難しい。
SFにはそういうテーマが山ほどある。スタニスワフ・レムの「ソラリス」などのように、そもそも意思の疎通ができない関係というのもある。
意思の疎通ができなくても、「相手を認識する」ことは可能かもしれない。
他者を認識するってこと、とても大切で、物語の普遍的なテーマだと思う。
(2017.12.15)