1974
小松左京原作、福田純監督の日本映画である。日本SF界の巨人・小松左京が1964年から「週刊漫画サンデー」で連載した作品を原作にしている。
wikiによると本作は山口百恵初主演映画「伊豆の踊子」の併映作品だったらしい。この当時、映画と言えば2本立て。併映は当たり前だった。考えてみればすごい話である「伊豆の踊子」とSFアクション映画「エスパイ」の併映。「伊豆の踊子」といえば、山口百恵三浦友和が初のコンビとなった映画である。wikiをみるといろいろいきさつはあるようだが、今考えるとすごい2本立てである。
だって、「エスパイ」の方は、藤岡弘、由美かおる、草刈正雄が主役級、さらに加山雄三や若山富三郎まで出てる。藤岡弘は「仮面ライダー」が終わった頃。由美かおるはアクションもでき、ヌードシーンもやりはじめた頃。一方、草刈正雄は俳優に転向したばかりの頃で同年に東宝専属になったばかりの頃であった。それに、山口百恵と三浦友和だよ。最高じゃないか。
当時この2本立てを見た人は、両作品の若い俳優たちのその後の活躍ぶりを見て、とてもいい思い出になったのではなかろうか。
さて「エスパイ」とはエスパーのスパイ、超能力を持った秘密工作員の名称である。国際機関に属しその日本支部に藤岡弘や由美かおるがおり、テストドライバーをしていた草刈正雄の特殊能力をみて、日本支部のメンバーに加えたところから物語ははじまる。
第二次世界大戦後、世界は冷戦下にあった。米ソ対立は各地に代理戦争にような紛争や緊張が生まれている。いま、東欧のバルトニアが世界大戦勃発の鍵を握っていた。国連の調停委員会は国際列車の中で逆エスパイのスナイパーに暗殺されてしまう。アメリカとバルトニア首相の会談が戦争回避には欠かせない。ソ連もこの会合を支持しているが、逆エスパイ組織はバルトニア首相の暗殺を試みる。果たしてエスパイの3人はこの危機を回避できるのか? そして、逆エスパイ組織とは、その真の目的は?
ヨーロッパの国際特急、トルコ・イスタンブールなど、海外ロケも充実。とくにイスタンブールの往年の風景は1990年に行った頃とあまり変わっていなくてちょっと懐かしい感じがして個人的には嬉しかった。
東宝は前年に小松左京の「日本沈没」で当てているのだが、本作は超能力ものということもあり、その表現には苦労が多かったようで、相当なB級映画感がただよう。ストーリーも予算と時間の枠に収めるための無理矢理感が強い。そういう映画ってあるよね。
でも、草刈正雄と藤岡弘は足が長くて存在感があり、由美かおるはそれに負けていない。
立ち居振る舞いがかっこいい3人なのだ。まるでマンガみたい。
なかでも、草刈正雄はしゅっとしていて、影があって、熱い男・藤岡弘と対照的にクールで、このひとと松田優作を並べた映画があればよかったのに、と思う。
そして、化繊のパンタロンが由美かおるには実に似合うのだった。
話がそれたが、この若き3人のふるまいを見るだけでも価値はある。