映画 侍タイムスリッパー

2024年、安田淳一監督作品。

 公開中友人らからとてもおもしろい映画だと絶賛されていた。
 残念ながら映画館で見られなかったのが配信に入ったのでおくればせながら見た。
 とてもよい映画だった。舞台は現代だが、時代劇愛がこぼれんばかりにあふれていた。
 もともと時代劇とは縁のない生活をしていたのだが、連れが時代劇にくわしく、その縁でここ20年ほど読んだり観たりしていたのが幸いした。
 池波正太郎の「剣客商売」も一通り読み、ドラマの藤田まこと版などはほぼ全作見ていたので、その際主人公の息子「大治郎」役をしていた若き山口馬木也が良い感じに歳を重ねていて、本作では主役としてよい演技をしていた。
 私自身も子どもの頃、体力増進のために剣道をすこしだけやっていたので、こういうチャンバラには一言、二言ある。剣道と「殺陣」はもちろん違うものだが、一対一の練習シーンなどには釘付けになってしまう。

 さて、話は簡単で、江戸末期の侍が決闘中に雷に打たれて21世紀の現代にタイムスリップしてしまうが、場所が京都の時代劇撮影所であった。エキストラの切られ役と間違えられたり、まわりの人たちに優しくされ、記憶早々の役者の卵として扱われて、時代劇の「切られ役」として生きる道を模索する。しかし、21世紀の現代は時代劇冬の時代。テレビでも映画でも時代劇はほとんど作られていない。「切られ役」「殺陣」の需要も激減している。そんななかでも筋の良い、礼儀正しい中年切られ役として重宝される主人公。しかしそこに思わぬ人物が現れ…。
 というもので、タイムスリップではあるが、SFというよりコントの「もしも」シリーズの映画化みたいな感じ。笑いあり、人情あり、チャンバラありの手に汗握る一大エンターテイメントであった。
 「カメラを止めるな!」に続き、インディーズの低予算エンタメはときにすごい映画ができるね。
 映画の後味もよくて、みんな楽しく映画を作っている感じがして、よい。
 注目すべきは「音」の使い方。剣が打ち合うときの効果音がシーンごとにうまく当てられていて、それがちょっとした感動を生んでしまう。
 全力でお勧めしたい。