星の涯の空
THE CHILDREN OF SKY
ヴァーナー・ヴィンジ
2011
2014年3月26日読了。「遠い神々の炎」の続編だが、今回はひとつの惑星での人類と異星集合知性体との物語。歴史修正主義はいかにして生まれ、育つのか。本書が上梓されたのが2011年。読んだのが2014年3月。このタイミングで読んでいたのはとてもよかったのだと思う。権力を思考する知性は、過去を容易に変更する。都合の悪い過去は書き換える。
もちろん、そんな読み方をする必要はない。私が、いや、現在の日本がそういう風潮を持っているからそういう読み方になるだけなのだ。前作で登場した集合知性生物。複数の個体が群れで行動し、思考音を共有することで、高度な知性を持つことになる。集まることで論理や記憶、感性といったものが高度になっていく。個体と集合知性の関係性が、社会性動物である人やハチ(アリ)の中間にあるような感じだ。
そこに、異星人である人がやってきて、騒動がおきる。それが前作。騒動を収めたものの。異星人である人は、自らの属する情報社会から隔絶されている。宇宙規模の闘争から逃れてきた世界で、別の社会固有の闘争に巻き込まれる。という物語だ。
私たちは普段、何気なく、親子、兄弟、パートナー、同僚、民族、国家、社会、同一言語、宗教などを語り、行動するが、それらひとつひとつには重ね合わさる部分があり、共同幻想の部分もある。個と社会は常に相互作用をしながら緊張関係にあると言える。
そういうことを考える思考実験としてもおもしろい。
そういうことをまったく考えずに、状況のストーリーとしてもおもしろい。
さて、本書は、前作、本書と、大きなストーリーが回収されていない。続編はまだ先なのかなあ。
(2015.6.20)