ティーターン
TITAN
ジョン・ヴァーリイ
1979
SF史に欠かせない作品のひとつである。
理由の一、ジョン・ヴァーリイの長編作品である。
理由の二、とてもハードなのにとても剣と魔法だから。
理由の三、SFを多く読めば読むほど、本書がおもしろくなるから。
理由の四、驚くべき生態系! 驚くべき生物! 驚愕のファーストコンタクト。
理由の五、タフな女性が主人公で元気な感じだ。
などなど。
NASAが送り出した土星の衛星へ向かう初の有人宇宙船リングマスター号。船長はシロッコ・ジョーンズ。初の女性船長である。乗務員は7人。男性3人、女性4人。うち女性2人は人工子宮生まれのクローン。
土星で12番目の衛星を発見したリングマスター号は、その衛星が自然にできたものではないことを発見する。自転数が早く、巨大なスペースコロニーか、世代宇宙船でないかと思われる。リングマスター号は、慎重に衛星への上陸を志すが、暴力的な手段でとらえられ、ほぼ裸の状態で衛星内の生態系<ガイア>に放り出されてしまった。彼らはひとりずつばらばらに出現し、ふたたび出会い、その過程でガイアの不思議な生態系と知的生命体に出会うこととなる。しかし、出会った知的生命体は、ガイアを創造した高度な知性ではなかった。
生き延びることだけではおさまらない船を失った船長のシロッコ。脱出し、地球に帰るためにも、この巨大なリングワールドであるガイアの中枢部にたどり着き、この生態系の「創造主」と会い、コミュニケーションをはかり、この生態系に生きる不思議な知的生命体との約束を果たそうとするのだった。
この作品の魅力はなんだろう。
たとえば、無線機やレーダーと同じ機能を提供する植物など、機械にたよらない生物機械で生まれる道具や、飛行船の役割をする動物など、出てくる生き物のおもしろさがある。
提示されるガイアという世界は、ニーヴンの「リングワールド」より異質で活き活きとした世界であり、世界そのものの秘密が、本書の最後を彩る。そのヴィジョンは壮大で、宇宙を俯瞰するような気持ちさえ芽生えさせる。
いつもならばネタばれ承知で書くのだが、この心地よいおもしろさはぜひ作品で味わって欲しいので、ここでは書かない。
もちろん、ニーヴンの「リングワールド」がアイディアとなっているのは間違いないが、それだけではない、生態系SFと言えば、ハーバードの「デューン」であり、「デューン」と言えば、あれである。「あれ」。小説を読んだり、映画やテレビシリーズを見ている人は分かりますね。それも出てくる。
「デューン」だけでなくハインラインの世代間宇宙船SFの傑作「宇宙の孤児」などは作品名まで登場する。
さらにさらに、SFという言葉がなく、伝説や言い伝えや神話しかなかった時代の、あの伝説の生き物が、あの伝説の生き物と死闘を繰り広げる。
もう、これ以上は書けない。書くものか! 読め、読むんだ。
そして、ヴァーリイが提示する「ティーターン」というガイアの魔法に酔いしれるがよい。
(2005.7.18)