レッド・ライジング2 黄金の後継者
GOLDEN SON
ピアース・ブラウン
2015
三部作シリーズものの2作品目。最近は2作品目のオチが3作品前提で「そこで終わるの?」というものが多いような気がする。
もともと火星ものSFに目がないので手に取っているのだが、2作品目になって、ますます火星ではなくなっていく。最初の舞台は宇宙戦艦で、そこから月、そして火星などなどに向かう。主人公は、ダロウ・アウ・アンドロメダス、別名リーパー(刈り手)。火星総督オーガスタ家の槍騎兵として契約し、将来の後継候補としても嘱望されている支配階級ゴールドの若者である。しかし、その実体は、少年時代の終わりに、若き妻を殺され、ゴールドへの復讐と火星の政治体制の転覆を目指す最下層階級レッドのダロウである。アレスの子どもたちと呼ばれる反体制集団によって人体改造と厳しい訓練、新しい身分を手に入れ、エリート養成校で勝ち抜き、火星総督オーガスタ家の元で艦隊司令候補として最終テストを受けていた。
しかし…。
ということで、月に居を構える人類社会の皇帝、オーガスタ家をはじめとする有力ゴールド族同士の策謀、陰謀のなか、火星と人類社会の覇権をかけての争いがはじまろうとしていた。そんななか、ダロウは仇敵のオーガスタ家の元で、火星の解放を思いながらも、その権力闘争の真ん中に巻き込まれていくのだった。
知恵と戦略、仲間を作る能力に長けたダロウの行動は、帝国内部の権力闘争を激化させていく。激しい戦闘と策謀。ダロウは禁じ手を使う。ゴールドにしか認められていない武器や立場を一時的であれ他の(下の)階級の者に使わせるのだ。それは信頼の証であるととともに、ダロウに疑いの目を向けることになる。ダロウの他者への信頼が勝つのか、確固とした社会制度の中に生きる人たちの価値観が勝つのか。勝利は誰の手に。
SFのジャンルのひとつ、スターウォーズ(帝国)ものである。舞台が太陽系と少々手狭だが、現在の科学知識を使いやすいのでリアリティはだせる。
超未来の話なので、人類は生き残りのために遺伝子改造を受け、種族ごとに役割分化した階層社会となっているわけだが、基本的な人間の属性は現在の私たちと変わらず、さまざまな欲望に満ちている。それゆえに分かりやすい物語であり、映像化もしやすいのだろう。しかしいまの分断に満ちた世界で分断が固定化された物語は受け入れられるのだろうか?
(2020.08)