変化の風

変化の風
THE WINDS OF CHANGE AND OTHER STORIES
アイザック・アシモフ
1983
 1986年8月に邦訳されているアシモフの短編集である。
 ここでもマルチヴァクが登場する。超巨大電算機、コンピュータ、動かないロボットである。マルチヴァクの神託を聞くには神官が必要である。つまり、正しい質問と正しいデータを渡し、出てきた答えを解釈する者である。まさしく神官。「接近中」では2030年に、宇宙より接近する何者かが、意味不明のメッセージを送ってきた。解読の可能性があるのはマルチヴァクのみ。さて、どうなる。
 もうひとつ、今日的に気になる作品がひとつある。「最後のシャトル」である。1981年の最初のスペースシャトル「コロンビア」を記念した作品である。シャトル計画は、70年代には本格稼働の予定だった。遅れに遅れて80年代に入る。それでも打ち上げと続くミッションは衝撃的だった。宇宙に行って帰る船である。2003年、帰還時に空中分解、7名の宇宙飛行士も失われた。その後、シャトルのミッションは再開されたが、もうまもなくスペースシャトルは退役し、その後の有人宇宙往還船の計画はない。残念である。この「最後のシャトル」は、ずっと遠くの未来まで使われていたシャトルの話である。
(2010.05.02)

アシモフ初期作品集3

アシモフ初期作品集3 母なる地球
THE EARRY ASIMOV
アイザック・アシモフ
1971
 そして、「鋼鉄都市」「はだかの太陽」と連なる、ロボットものと、宇宙国家と閉塞する人類の話の大元の作品が登場する。「母なる地球」である。地球を閉じ込める宇宙国家のひとつオーロラが登場する。1948年に書かれた作品だが、地球の人口は60億人としている。なかなかの数字じゃないか。
(2010.05.02)

アシモフ初期作品集2 ガニメデのクリスマスマス アイザック・アシモフ

アシモフ初期作品集2 ガニメデのクリスマス
THE EARRY ASIMOV
アイザック・アシモフ
1971
 いよいよ歴史心理学の曙である。「地球種属」「虚数量」で心理学が語られる。アシモフが自ら書いているとおり、集団を対象にした心理学がストーリーの根幹として使われる。ちなみにこのころは、異星人も出てくる。まだ人類以外の知性体がいる宇宙である。いずれアシモフの宇宙からは消えていくのだが…。
(2010.05.02)

アシモフ初期作品集1 カリストの脅威

アシモフ初期作品集1 カリストの脅威
THE EARRY ASIMOV
アイザック・アシモフ
1971
 本当に、この作家は! 19歳にして作家デビューした多作家で、さらに日記をしたため、若い頃からコアなファンがいると、こうなるのだ。単行本未掲載の初期作品を集めて、時系列にまとめた作品群。趣味の世界であるが、それが翻訳され、出版され、そこそこ売れる。すごい作家である。笑える作品も多いし、赤面しそうな作品もある。何より、アシモフの若い頃と言えば、第二次世界大戦以前のことである。ヒットラーの台頭など、ユダヤ系アメリカ人のアシモフにはたまらないものだったろう。そういう話も満載である。
 その中で、「太陽をめぐるリング」はユーモアたっぷりの作品である。太陽系の郵便配達船が、より高速に届けるため、太陽近接軌道を試すことになった。ふたりのパイロットがそれに挑むが…。1939年に書かれた作品で、若書きではあるが、スラップスティックとしてはなかなかのものである。さすが、アシモフ。
(2010.05.02)

サリーはわが恋人

サリーはわが恋人
NIGHTFALL TWO
アイザック・アシモフ
1969
 短編集である。ロボットも出てくる。動かないロボット、世界を統べるコンピュータのマルチヴァクも出てくる。この短編集は、NIGHTFALL AND OTHER STORIESを日本で二分冊にした後半である。であるから、本書は、NIGHTFALL 2 である。NIGHTFALL といえば、「夜来たる」である。後に長編化されているが、オリジナルは短編の作品で、それが収められているのがNIGHTFALL ONE 「夜来たる」である。実は、この短編集を持っていない。読んでいないのか、どうしたのか、こちらもまた忘却の彼方である。
 さて、本書「サリーはわが恋人」の表題作は、自動車型ロボットというか、陽電子頭脳付き自動車の物語である。喋らないが、意志はある。そんな自動車たちの愛らしい物語をどうぞ。
 そうそう「戦争に勝った機械」に出てくるマルチヴァクと太陽系連合軍司令官と、その取り巻きたちの会話も捨てがたい。
(2010.05.02)