大尉の盟約
CAPTAIN VORPATRIL’S ALLIANCE
ロイス・マクマスター・ビジョルド
2012
ヴォルコシガンシリーズの「外伝」で、主人公はマイルズの同い年であり、友人?であり、親戚?であり、これまでのストーリーでも狂言回しの役ばかりだったイワン・ヴォルパトリル大尉。
外伝的な作品だから、これまでの読者への暖かい贈り物といったところ。ユーモアと温かい人間関係と、親子・家族って複雑だよね、が、かかわる物語。このシリーズ、最近はミステリー的な要素も多いけれど、今回はそれもなし。グレゴール帝やヴォルコシガン聴聞卿の婚礼にまつわる物語と似た、もうひとつのお話し。最初の100ページも読めば、終わりは想像つくけれど、ちゃーんと、愛読者には、あれが、これが、それが、どれが、と、エピソードも満載。
なんだか「後日談」っぽくなっているけれど、このあと、本書のストーリーが伏線となって、大事件が起きることを、将来に予感。
ところで、2015年秋の今、横浜市で発覚したマンションの傾き問題。すごいね。杭が岩盤まで到達していなかったから、傾いたんだって。先日、雑誌「NEWTON」が、高層ビルの特集をしていて、地震がほとんどないけれど、岩盤もないドバイなど中東での超高層ビルは、多くの杭と杭をつなぐ筏によって「浮いている」状態でつくっているそうですよ。日本だと、地震や地下水が多いのでそれはできないんでしょうね。だから、強い岩盤から支える構図にして、陸上に出たところで、免震、制震にするんでしょう。
地面の下って、宇宙や海以上に難しいのは「見えない」ってことだよね。だから、音波などを使って、固さや構造を調べるけれど、今の技術では、細部や組成が大まかにしか分からないのかな? 今、東電福島第一原子力発電所の事故で、溶け落ちた核物質を大量に含む燃料がどこにあるのか、宇宙線を使って調べるなんて技術が開発されているけれど(そうして、まだ不正確だけど)、そういうふうに、地下の組成や微細な構造などが分かるようになって、地下立体マップなんていうのが詳細に作られるようになるんだろうか?
ということを、これから読む人はちょっとだけ頭に入れておくと、後半楽しいかも。
(2015.10.25)