紙の動物園
ケン・リュウ
THE PAPER MENAGERIE AND OTHER STORIES
2015
アメリカ在住中国人のアメリカで発表されたSF短編を、日本でオリジナル編集した短編集。アジア的感性と緻密な構成が美しいSF小品となって並べられる。
表題作の「紙の動物園」は時間を越えた家族と愛についての物語。母が折る折り紙は、母が命を吹き込み、動くことができた。ささやかな魔法。そこにこめられた想い。静かに心をゆさぶられる。決して電車などで読んではいけない。部屋にこもってひとりで読んだ方がいい。
続いて並べられる「もののあはれ」は、たったひとつの冴えたやりかた。その後ろにあるひとりひとりの想い。
もちろん、重い話ばかりではない。ラリイ・ニーヴンの短編のような軽いユーモアSFもあれば、テッド・チャンばりのハードな作品もある。
銀背で出ているが、「芥川賞受賞『火花』著者又芳直樹さん推薦」の帯のおかげか、書店でもSF以外の場所に置かれていたりする。これがSFの入口になれば良い。これが、アジア系作品(英語からだけど)の入口になれば良い。
2016.1.29