三体2 黒暗森林
THE DARK FOREST
リウ・ツーシン
2006
中国SF「三体」の第二部「黒暗森林」である。前作を読んでいるにこしたことはないが、本作だけでも十分に楽しめると思う。
地球-人類は異星知的種族三体文明の侵攻危機を控えていた。すでに、高次元で人工知性を持ち低次元では陽子としてふるまう智子(ソフォン)によって地球上で人類が秘密を持つことができず、また、量子にまつわる研究や技術開発を発展させることができなくなっていた。物語は、人類が新たな紀元として定めた危機紀元3年に始まる。「三体艦隊の太陽系到達まで、あと4.21光年」であることは分かっている。
いまだ地球重力圏を満足に越えることができない人類社会は、それでも、来たるべき宇宙戦争に備えるため、宇宙軍をつくり、地球全体が戦時体制へと向かっていた。
さらに、智子(ソフォン)対策としての奇策・面壁者計画を発動させる。地球全体から選別された4人の専門家に、人類が持ちうる最大限のリソースと権限を与え、その要求についての検討は行なわれるが、真の意図については他の誰にも分からないようにしなければならないという驚愕すべき計画である。はたして、この4人の人間たちは何を考え、どう行動するのか。それは、三体文明との戦争に勝つことができるのだろうか。
「黒暗森林」では、冷凍睡眠技術を織り交ぜつつ、三体艦隊が着実に太陽系に進む200年以上の歳月が語られる。その間に、人類社会と地球は絶望、暗黒、再興の波を超えていく。
それは、想像を絶する変容である。現代人と同じ思考を持つ冷凍睡眠から目ざめた人達と、新しい思考を持つ人達の違いはどうなのだろう。主要な登場人物の何人かは、時を越え、飛び飛びに未来を見ることになる。彼らは過去の英雄なのか、使い道のない石器時代の生き残りなのか。
壮絶な人間ドラマの果ての宇宙戦争。
前作とはまったく違うが、その風呂敷の大きさは前作をはるかに超えている。
21世紀初頭のSF総集編という感じ。
200年か。200年前は1821年。中米でヨーロッパからの独立がすすんだ年。伊能忠敬が日本地図をまとめた頃。蒸気機関が発達し、蒸気船や鉄道などが拡がり始める直前の時代。電気技術は基礎科学と基礎開発の時代。第1次の産業革命のさなか。工業化のはじまり。
2021年。インターネットとコンピュータ技術の爆発の時代。人工知能が本格的に活動をはじめる直前の時代。社会、国家、生活、労働が大きく変わりそうな予感の時代。
同時に人類活動の影響が地球の環境や生態系を大きく変え、危機が訪れようとしている時代。
2221年。さて、どうなっているのだろうか?エネルギー問題と地球環境・生態系の問題がこれから200年の間のどこかで大きなギャップを生むことになる。解決が先か、破滅的事象が先か。人類はこの暗黒の宇宙で生き延びることができるのだろうか。
(2021.11.15)