サイバー・ショーグン・レボリューション

サイバー・ショーグン・レボリューション
CYBER SHOGUN REVORLUTION

ピーター・トライアス
2020

 タイトルが80年代ポップス的じゃないですか。邦題だろうと思ったら、原題そのまま。
「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」「メカ・サムライ・エンパイア」に続く、歴史改変ロボットSFシリーズ第三弾。かの名作「高い城の男」(フィリップ・K・ディック)と同じように、日本とドイツが第二次世界大戦に勝利し、アメリカを分割支配する世界。同じように日本領アメリカが舞台。しかも、巨大ロボットもの。小競り合いを続け緊張が続く日独間。大日本帝国支配に対する抵抗運動も起きている世界。巨大ロボットが究極兵器として軍により開発され、そのパイロットは特殊な訓練を受けている。さらに、ドイツが開発したバイオロボットは機械と生体の融合体。もうどろどろ。
 第一作目は、「高い城の男」を意識した歴史改変ロボット小説、第二作目は、ミリタリーSF、それに続く本作「サイバー・ショーグン・レボリューション」は、タイトル通り、内なる革命の物語である。日本領アメリカの実効支配を行なう軍部での権力闘争と、ドイツ領アメリカと高まる緊張関係、大日本帝国本国と日本領アメリカ支配層の緊張関係、そこに登場した伝説のナチスキラー(暗殺者)ブラディマリー。彼女は、ナチス要人暗殺のプロとして知られてきた。いま、日本領アメリカでの権力闘争が実戦に発展した後、さまざまな陰謀がうずめくなかでブラディマリーがあるときは人を助け、あるときは組織を壊滅させていく。彼女は何者なのか、その動機は、そして、権力闘争がいきつく果てに、この世界の幸せはあるのか。
 基本は巨大ロボットと、そのパイロットたちの物語だから、安心して読んで。エンターテイメントよ
 それにしても、戦争に勝者はなく、正義はないけれど、大日本帝国やナチスドイツが勝利しなくてよかったと思っているよ。いかなる政治体制でも実権を持つ「王」を抱えた国や体制は責任を「王」に預けるため組織がピラミッド状になり、次第に抑制が効かなくなる。権力はなんらかの形で交換可能な「偽りの王」に一時的に預けるものであり、常に交換されることで社会を硬直にさせないことが大切だ。交換を武力などの強制力で行なうのは結局のところ倒す側も倒される側も「王」を志向することになる。
 だから、民主主義的システムが人類社会にとって有効なのだ。
 しかし、偽りの民主主義的システムが増えていることも事実。
 身近であっても、「王」を求めないことが大切。

(2021.12.10)