THE SURVIVORS
アン・マキャフリイ
1984
「恐竜惑星2 アイリータの生存者」である。3部作と言われていたが、結局この第2部で「恐竜惑星」ものは終了となる。マキャフリイの宇宙では「知的惑星連合」ものとして位置付きまとめられるので、その中での「惑星アイリータ」ものと考えればよいし、第2部で終わったからといって尻切れトンボになっているわけではなく、本書をもって大団円を迎えたとも言える。
前作で惑星アイリータ調査隊は、巨大母艦探査船ARCT-10からの連絡が途絶え、内部に反乱を抱えてしまった。共同指揮官のカイとヴェアリアン、医師のランジーらが指導者として体得していた特殊能力と、ボナード少年の機転によりなんとか反乱者たちから逃れることができた。しかし、ほぼすべての調査資材などを失い、唯一確保したのはシャトルのみ。そこで本隊は反乱者たちから姿を隠すために惑星アイリータである程度の知能を持っている社会的飛行動物ギフの生息地にあってギフが放棄した崖の洞窟に姿を潜め、助けが来るまでの間強制睡眠に入ることを決めたのだった。SOSは知的惑星連合の上位種族といえる長命のセク族に対して発せられていた。そしてその助けが1週間後なのか、数年後なのか、見通しも立たないままに。
ということで本作は、長命で行動するまでに時間がかかると言われる岩石的種族セク族のトールが共同指揮官カイを目ざめさせるところから始まる。
目ざめてみたら、43年の歳月が経っていたのだ。
まあ、セク族が動くまでそれだけの時間が必要だったということだ。
43年。人類ならば1、2世代を経ることができる時間である。幸い反乱者たちに見つかることはなかったようである。しかし、もし反乱者たちが生きており、自主的な植民者として生きていたら、ある程度の人口になっているだろう。生きていたら。
気がついたカイやヴェアリアンたちは、ギフたちが彼らの洞窟と洞窟の中のシャトルを大切に守っていたことを知る。その動機は不明だが、シャトルを巨大な卵として見なし、信仰か象徴としていたのかも知れない。そして、外から来る人類=反乱者には敵対してきたようである。おそらく反乱者たちも、その生存の中でギフと対立関係にあったのであろう。
さて、カイの古い友であるセク族のトールは、決してカイの救出だけを目的に来たのではなかったらしい。いやむしろ救出は他の調査隊などにまかせてしまい、カイに大昔の探査技術の痕跡がどこにあったかをすぐに教えるよう迫った。どうやら長命で古い銀河種族であるセク族と惑星アイリータには深い関係があったようである。
そう、惑星アイリータの数々の謎は、セク族とのつながりのなかで解かれていくのである。
物語は、セク族と惑星アイリータの関係を伏線としながら、本筋は反乱者たちと調査隊との接触と、人類とギフたちとの交流を軸に語られる。そのなかでも、反乱者たちの子孫である若きリーダーでマッチョでまっすぐな好青年アイガーと、そんな好青年アイガーに惹かれてしまうヴェアリアンが物語の軸となる。そして、救援要請をもって来訪する艦隊との関わり。全部を一気に片付ける勢いのある第二巻となっている。
このあたりはストーリーテーラーとしてのマキャフリイの面目躍如といったところ。
それにしても、最初の段階で惑星アイリータの現住生物に襲われ毒で苦しむことになってしまうカイがちょっとかわいそうでならない。
そして、セク族。すごいぞセク族。寿命も繁殖方法も明らかにされないが、知的惑星連合にとっては上位種族としかいえない強大な力を有するセク族。ぶっちゃけ人類を含む他の宇宙種族のはるかはるか以前より宇宙航行種族として長い長い歴史を持つセク族。そんなセク族の驚くべき姿や生態、歴史の一端を、本書は明らかにしてくれるのだ。
おもしれー。セク族。