六つの航跡
SIX WAKES
ムア・ラファティ
2017
地球初の恒星間移民船ドルミーレ号。2000人の冷凍者、500人格分のデータを乗せて地球を離れ、航海を続けていた。船を操るのは6人のクローン乗務員とAI・イアン。
2282年、クローンに関する国際条約が成立し、クローンは一度に1体のみ、人格データは最新のもののみ、特別な条件を除き、人格データの変更、DNA改変したクローン体の作成は禁止された。
2493年、6人のクローン体は、ドルミーレ号の中で船に乗る直前の記憶までを持って目が覚めた。あたりは血まみれ、彼らの死体が重力を失った船内で浮かんでいた。AIも自我を失い、記録と記憶を失っている。最悪の目覚め、最悪の事態。
彼ら6人のクローンは、地球で犯罪を犯し、移民船が無事に目的地に到着すればその罪は免罪されるという条件で乗り込んでいた。誰がどんな犯罪を犯したかも明らかにされない。そして誰かが殺し、破壊工作をしない限り、現状は生まれない。
誰もお互いを信じられない。犯人は?動機は?手段は?
クローンと人格のデータ化技術により、事実上の不死を得た人類。
初期には、クローン体のDNAハック、人格データのハックなどが合法、違法問わずに行われていた。その技術はクローンに関する条約ができたことで地下に潜り、そして、その技術は、技術そのものの力で途絶えることなく継承されることになった。
6人の過去が数百年に渡って少しずつ明らかにされる。
それは…。
密室殺人ミステリ? いや、ミステリとは言えないかも。SFミステリは、最初に科学技術的な背景が明らかにならないと読者を置いてきぼりにしてしまう。だから、謎解きが少しずつ進むと、推理小説にはならない。でも、ミステリ感は満載。密室ドラマでもある。
映画と言うより、舞台向きなのかもしれない。
クローン&人格継承技術がもたらす闇について、なるほどと思える作品でもある。
別に恒星間移民船である必要はないのだけれど、密室にするにはこれが一番。
かのハインラインも使っていたしね。
(2020.1)