星は人類のもの連盟

THE LONG RESULT

ジョン・ブラナー
1965

 長年の課題作をようやく手に入れて読めた。嬉しい。タイトルがすごいよね「星は人類のもの連盟」だよ。1965年発表で1975年に邦訳出版された。なんと初版を手に入れてしまった。状態もきれい。コレクターってすごい。
 原題は「THE LONG RESULT」。意味深。「時の流れの果てに」みたいな感じかなあ。これを「星は人類のもの連盟」としたところが邦題のすばらしさだね。
 舞台は未来の地球。地球は亜光速飛行技術を手に入れいくつかの星系に人類は植民を果たした。人類の植民星はそれぞれに文化的、科学技術的に地球とは違う発展を遂げた。そしていくつかの異星文明に遭遇し平和裏に交流するようになった。恒星間航行技術を持つ異星文明はなく、地球は人類の外惑星世界と異星文明世界の盟主を自負する存在であったが、もちろん侵略的思惑はなく言ってみればまあ「態度がでかい」ぐらいであった。地球には宇宙港があり、外惑星世界や異星文明と地球の交流の窓口となる「文化交流局」が設置されていた。
 主人公のロアール・ヴィンセントは若くして文化交流局の幹部となったエリートのひとりであるが、仕事はそつなくこなし、プライベートを充実させたいと若くして老成したような性格の持ち主である。すでに人類は1、2世代の間に長寿を確立し、100歳を超えても現役で働くことは当たり前の社会となっていたのだ。その時間の長さから何ごとも慌てない性格が出てきてもおかしくはない。
 ところがそのロアールに災難がふりかかる。人類の外惑星であるスターホームがはじめて独自に開発した恒星船で地球に到着するのだが、その直前になって新しく出会ったトー・セティ星人の一行を乗せており、人類との交流のための交渉を求めてきたのだ。どうもスターホーム側ではトー・セティ星人をうまくお世話できなかったようである。
 この事態に、肝心の交流チームの主要メンバーが不在であり、「暇なはず」のロアールに急きょ対応するよう交流局長からの指示が下ったのだ。
 ロアールは結婚まで考えているガールフレンドのパトリシアとの食事を諦め、宇宙港に向かうのだが、そこで事件が起きた…。
 異星人を狙うテロが発生したのである。犯行は「星は人類のもの連盟」によるものと考えられた。この団体は古くからあり、宇宙は人類が支配すべきというものだが、組織規模、資金面からもたいしたことのないグループと見なされていたが、ここにきて事態は変わってきた。
 はたして「星は人類のもの連盟」の狙いは何か?その背後には何があるのか?
 そこには地球と人類の未来を左右するできごとが待っているのだった。

 さてさて、原題にあるような 長い長い時の果ての結果はどうなるのだろう。

 1965年の作品なので女性を軽視するなど、当時の価値観や行動が含まれていることは指摘しておくが、同時に、ジョン・ブラナーの未来予測のいくつかはさすがである。
 自動衝突回避技術を持つ自動運転自動車、嘘発見器の活用、長寿による労働環境、生活意識の変化などはうまく書かれている。また異星人・外惑星人フォビアに対して、多様性を前提とした共生社会を模索し、紛争を回避する思想などはきわめて今日的なものであり、1965年という地域紛争と冷戦と人種差別の時期を考えれば、現実の社会の変容を志向、提起した作品であるとも言える。

 本書から10年後に発表された「衝撃波を乗り切れ」(The Shockwave Rider 1975)もいつか読んでみたいなあ。