究極のSF

FINAL STAGE

アンソロジー
1974

 1970年代にはいり、ふたりのSF編集者バリー・N・マルツバーグとエドワード・L・ファーマンは大胆な企画にとりかかる。13人のSF作家にそれぞれひとつずつのテーマを与え、そのテーマについての「決定版」を書くよう依頼したのである。それだけではない。作品とともに、そのテーマへの感想、作品リスト(テーマの古典、作品を書く上で影響を受けたもの、なお、1篇以上は自作を含むこと)の提出も求めたのである。
 頼まれて引き受けた作家も大変だったろう。
 結果的に、70年代の時代的雰囲気をたっぷりふくませて、ちょっと理屈っぽい作品がそろった。ひとつひとつを語るのは野暮である。まず、目次を転載。

ファースト・コンタクト
「われら被購入者」フレデリック・ポール
宇宙探検
「先駆者」ポール・アンダースン
不死
「大脱出観光旅行?」キット・リード
イナー・スペース
「三つの謎の物語のための略図」ブライアン・W・オールディス
ロボット・アンドロイド
「心にかけられたる者」アイザック・アシモフ
不思議な子供たち
「ぼくたち三人」ディーン・R・クーンツ
未来のセックス
「わたしは古い女」ジョアンナ・ラス
「キャットマン」ハーラン・エリスン
スペース・オペラ
「CCCのスペース・ラット」ハリー・ハリスン
もうひとつの宇宙
「旅」ロバート・シルヴァーバーグ
コントロールされない機械
「すばらしい万能変化機」バリー・N・マルツバーグ
ホロコーストの後
「けむりは永遠に」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
タイム・トラベル
「時間飛行士へのささやかな贈物」フィリップ・K・ディック

 実は、本書は個人的にやらかした1冊である。たぶん2回。都合3回購入していると思われる。最初は、個人的ディックブームの時に買って、その後、同作品が別の作品集に載っていたので手放した(と思う。すでに忘却の数十年前)。
 次に、表紙がリニューアルされていて、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの名前に惹かれて買ってしまった。そして読んでいる。本棚にあった。
 そして、最近、古書店で売られていて、「お、なつかしい表紙、でも読んでいなかったな」と思って買ってきて読んで、いまここにいる。
 これから増えていくんだろうなあ。そのための備忘録としての読書録であるのだが。
 ひとは忘れる。老いる。そして、死ぬ。
 死んだら、もう、読むことはできない。忘れることもない。書くこともないが。

 それはともかく、「究極」と問われると、「死」を連想するものであるのだろうか。そういう構成の作品も多い。
 ひとつだけ紹介するならば、死を乗り越える短編としてハリー・ハリスンの「CCCのスペース・ラット」を推したい。テーマは「スペースオペラ」であり、実際にスペースオペラであるが、ドクターE・E・スミスをはじめとするスペースオペラの古典を徹底的に笑い飛ばすのが70年代の古典スペオペへの敬意と決別宣言なのであろう。ちなみに、ジョン・スコルジーが2012年に発表した長編「レッドスーツ」も同じテーマである。スペースオペラは古典ゆえにパロディ化しやすいのだ。